ヴァイオレット・エヴァーガーデン
V I O L E T  E V E R G A R D E N

ストーリー

 4年間にわたる東西南北による大陸戦争が終結。その戦場で「武器」と称されて戦うことしか知らなかった少女・ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、激化する戦場で両腕を失い、自在に動く義手を付けることを余儀なくされる。
 退院したヴァイオレットは、ホッジンズの下で、自動手記人形としてC.H郵便社で働きはじめる。ヴァイオレットには、かつて戦場で誰よりも大切な人・ギルベルト少佐がいた。
 最後に聞かされた「愛してる」という言葉が理解できなかった彼女は、仕事と日常を通じて人と触れ合いながら、その言葉の意味を探していく。

登場人物

 大半の登場キャラクターの名前(または名字)は、実在する花の名前がつけられており、何かしらの意味が込められていると原作者が明言している。

主要人物

本作の主人公。金糸の髪に青い瞳、玲瓏な声を持つ可憐な容貌をした少女。
大戦中はライデンシャフトリヒ陸軍の女子少年兵であり、ギルベルト直属の部下として単独で一個分隊に匹敵する戦闘力を持っている。
「ライデンシャフトリヒの戦闘人形」の渾名で恐れられていたが大戦時の戦傷で両腕を失う。大戦後、後見人の一人となったクラウディアが経営するC.H郵便社にて、自動手記人形として代筆業をしている。
少女兵時代にギルベルトに買い与えられたエメラルドのブローチを命に変えても惜しくない程大切にしており、常に身に付けている。両腕には義手を装着しており、普段はエヴァーガーデン家の奥方に貰った革手袋をはめている。
女子少年兵として戦ってきた生い立ちのためか、感情の起伏に乏しく無表情が多い。誰に対しても敬語で話す。
孤児で言葉も親も知らなかったため、ヴァイオレットという名前を陸軍時代にギルベルトによって花の女神の名前から名づけられた後、エヴァーガーデンという姓を後見人によってその一家のものを名づけられた。
ギルベルトのことを自身の命に代えても守りたいと思うほど、大切に思っている。


C.H郵便社の社長。大戦中はライデンシャフトリヒ国陸軍の少佐(アニメでは中佐)だった。ギルベルトとは士官学校時代からの親友。
親から女性の名前をつけられたことを気にしているため、クラウディアと名乗ることを嫌っている。人好きのする性格で情に厚い性格。
実家はライデンシャフトリヒにて商家を営んでいる。女性との付き合いは幅広くあるようだが、特定の恋人を持とうとはしていない。
大戦中にギルベルトからヴァイオレットのことを頼まれており終戦後はヴァイオレットを家族のように見守っている。


ヴァイオレットの陸軍時代の上官。「ライデンシャフトリヒ陸軍特別攻撃部隊」の隊長(階級は少佐)で、独身。代々続く名門ブーゲンビリアの子息であり、当時は当主だった。
兄にディートフリートを、原作では妹を持つ。25歳当時、兄に押し付けられる形でヴァイオレットを引き取り、道具として扱えと言われるが、言葉も喋れなかった彼女を見守りながら、いつしか愛するようになる。


C.H郵便社

 クラウディア・ホッジンズ
C.H郵便社の社長。詳細は主要人物を参照。

C.H郵便社の自動手記人形。原作ではクラウディアやベネディクトと共にC.H郵便社の創設メンバーであり、年齢もクラウディアと同世代。
天真爛漫な性格をしており、クラウディアのことは社長と慕い、ベネディクトのことは外伝にて恋心が明らかとなる。
ヴァイオレットについてはとある行事をきっかけに、同僚としてではなく友人として見るようになった。元拳闘士で、握力だけなら男性よりも強く、噴進砲を投げ飛ばす腕力の持ち主。
アニメでは黒髪に紫の瞳、小麦色の素肌に豊満な容姿、人々を魅了する文章力で絶大な人気を誇り、指名が絶えない大人の女性として描かれている。本人曰く入社以前は踊り子だった模様。


C.H郵便社に勤めている配達員の青年。サンディブロンドにスカイブルーの瞳、ハイヒールブーツが特徴。原作ではクラウディアやカトレアと共にC.H郵便社の創設メンバー。
カトレアとはしょっちゅう喧嘩をしている。ヴァイオレットには戦闘能力が高いと評されている。拳銃の使い手。クラウディアのことは「おっさん」と呼ぶ。
アニメではクラウディアと共にC.H郵便社を創設した仲で、社長や他の社員に対してタメ口を聞く。


アニメオリジナルキャラクター。C.H郵便社の自動手記人形。アイリスより少し先輩。おとなしい性格ゆえに依頼主との対話を苦手としているため、トラブルに見舞われることもある。
盲目の小説家・モリー・オーランドの小説に感動し、自動手記人形を志した経緯を持つ。


アニメオリジナルキャラクター。C.H郵便社の自動手記人形。ライデンシャフトリヒ北東部の山村・カザリの出身。
失恋のショックと働く女性への憧れから、村で一生を終えるよりも街に出て働きたいと字の読み書きやタイピングを猛勉強し、自動手記人形になるためにライデンに上京した経緯を持つ。
故郷にはエイモン・スノウという幼馴染がおり、かつて思いを告白したことがあるが、幼馴染にしか見れないとの理由で振られている。
名前の由来は誕生当時に咲き乱れていたアイリス。



 ラックス・シビュラ
ヘテロクロミアの瞳、ラベンダーグレーの髪の持ち主の少女。かつて孤島シュヴァリエの理想郷で半神として崇められていた。
ヴァイオレットの勧めを受けてC.H郵便社に所属し、やがてクラウディアの秘書となる。

 ローランド
アニメオリジナルキャラクター。C.H郵便社に勤めている配達員の男性。
ギルベルトの死亡扱いの件で自室に引きこもっていたヴァイオレットに手紙を届け、共に手紙を配る過程で彼女が精神的に立ち直るきっかけを与える。

 ネリネ
アニメオリジナルキャラクター。C.H郵便社に勤めている受付のブロンド髪の女性。晩年は博物館の案内係を務める。

 リリアン
アニメオリジナルキャラクター。C.H郵便社に勤めている受付の赤髪の女性。

家族関係者

 ティファニー・エヴァーガーデン
エヴァーガーデン家当主パトリック・エヴァーガーデンの奥方。息子を大戦で亡くしている。
大戦後、ヴァイオレットの後見人の一人となる。原作ではヴァイオレットと同居し、淑女の教育を施している。

 ディートフリート・ブーゲンビリア
ヴァイオレットの元主でありギルベルトの兄。世間から「辺境伯」の名で知られるブーゲンビリア家の長男。
陸軍への仕官が代々の慣習である実家で唯一海軍に仕官して海軍大佐となり、家督をギルベルトに押し付けたことから実家とは絶縁状態となっているが、弟だけとは交流が続いている。
ヴァイオレットを持て余し、彼女をギルベルトに押し付ける形で託した。原作では自分の仲間を殺したヴァイオレットへの恨みと、彼女という殺人人形への恐れ、それでも自分が一番信頼している弟に任せたという複雑な感情を抱いている。

 ブーゲンビリア夫人
ギルベルトとディートフリートの母。原作では存在だけが示唆されている。
アニメでは夫に先立たれて久しく年老いて記憶力こそ落ちているものの、ギルベルトを死なせたことを涙しながら詫びるヴァイオレットと対面する姿が描かれており、彼女を優しく諭す。

用語

 自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)
人間の肉声を文字として書き起こせる機械人形。活版印刷並びにタイプライター、そして機械人形の権威であるオーランド博士が視力を失った小説家でもある妻・モリーのために作ったものであり、安価に貸し出す機関も普及した。
上記から転じ、人形のように代筆業を行う人間のことも「自動手記人形」と称されている。特に終戦後の女性たちにとって社会で活躍する機会を得ると人気があり、自動手記人形育成学校も開校している。
アニメでは「オート・メモリーズ・ドール」という正式名での呼称はされておらず、省略した呼称「ドール」、または「自動手記人形」と呼称されている。

 C.H郵便社(クラウディア・ホッジンズゆうびんしゃ / シーエイチゆうびんしゃ)
大陸南部のライデンシャフトリヒ国の首都・ライデンに社屋を構える私営郵便社。クラウディアが社長を務める。終戦後に軍を退役したクラウディアが発起人となり設立。創設メンバーにヴァイオレット、ベネディクト、カトレアが含まれる。
一般的な郵便業務に加え、文字が書けない人や大事な手紙を送りたい人のために自動手記人形による代筆業務も受け持ち、社屋まで足を運べない人のための出張代筆も受け持つ。

 大戦(原作版)
大陸戦争と通称される。本編開始の4年前に勃発し、大陸全土におよんだ。北側の不当貿易により南側が北上侵攻を開始し、それと同時にかねてより宗教問題で対立関係にあった西側と東側の宗教戦争が勃発する。
元より北側と親交が深かった東側が北側に呼応し、それに対抗するように西側が南側と同盟を組んだ。四者の戦いはインテンス最終決戦により南西側の勝利となり、北東は戦後賠償を求められた。

 大戦(アニメ版)
北方戦役西部戦争などの総称でもある。ライデンシャフトリヒ北東部の豊富な地下資源を巡り、北の大国・ガルダリク帝国が越境したことを発端に、やがてさまざまな思惑を抱いた周辺諸国も同盟軍として参戦する。
南北二派に分かれて4年間も続いた結果、ライデンシャフトリヒをはじめとする南部側の勝利に終わったが、大陸の各地と人々の心に深い傷痕を遺し、和平を認めない一部の諸国の遺恨も残している。

 北方戦役
4年前にガルダリク帝国が越境したことによって勃発した戦争で、大戦の発端。戦火の中、ディートフリートがヴァイオレットを拾い、少年兵として教育した。

 西部戦争
大戦末期に勃発した戦争。それまで戦火の影響下になかったライデンシャフトリヒ西部の街・ヘルネが、戦線を突破されたことにより、多大な被害を受けた。